N.SEMINAR「これから非工業都市が成長する理由」木下斉

非工業都市の可能性

日本各地で地域活性化プロジェクトに関わる一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス理事をつとめ、経営とまちづくりの専門家として活躍する木下斉氏。

高校1年から地元商店街活性化に携わり、助成金に依存せず地域や地元企業と連携することで黒字化を実現、夏休みなどを利用し全国の商店街へ丁稚奉公をしながら、商店街の現状を調査、高校在学中に全国商店街合同出資会社の社長就任したことでも知られています。

「奈良は他の地域と比べると、恵まれている」と木下氏は話します。奈良が恵まれている、その理由とは? 今回の記事では「これから非工業都市が成長する理由」をテーマに、奈良を含む非工業都市の成長の可能性についてと、木下氏が関わった地域のまちづくりの事例とともに、地域の未来をつくる小規模経営者のための経営のヒント、重要なポイントをお話しいただきます。(この記事は2月20日に開催されたN.SEMINARの講演内容の一部を参考に、主催の奈良クラブのご協力のもと、奈良新聞社が記事化したものです)

木下斉(きのしたひとし)
1982年東京生まれ。早稲田大学高等学院在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院 商学研究科修士課程へ進学。在学中に経済産業研究所リサーチアシスタント、東京財団リサーチアソシエイトなどで地域政策系の調査研究業務に従事。熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地の地域再生を目的とした事業会社への設立支援や投資を行う。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。2015年からは都市経営に関するプロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学、公民連携事業機構等とスタートさせ、すでに300名以上の修了生を輩出し、100以上のプロジェクトが全国で展開されている。内閣府地域活性化伝道師や各種政府委員なども務める。主な著書として『地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)、『福岡市が地方最強の都市になった理由』(PHP研究所)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)、『まちづくり幻想 -地域再生はなぜこれほど失敗するのか-』(SBクリエイティブ)など。

 

非工業都市とは

日本の製造業を支える工業地帯、京浜・中京・阪神地帯を中心に、日本各地の工業地帯の都市は、「工業都市」として地域を発展させてきました。

しかし、作業の機械化や従業員の働き方、人件費が安い海外へ雇用が流出するなど、現代の工業都市はかつての姿とは変化しており、昔よりも工業の発展=地域の発展と直結していない地域が増えてきています。

「日本の地域の発展は、工業をいかに伸ばすか」という考え方以外にも、新しい視点で地域の未来を考える必要があります。

そして木下氏は、これから成長できるのは工業地域ではなかった「非工業都市」だと話します。工業都市よりも発展が遅れていると言われ続けた地域が、なぜこれから成長できるのでしょうか。

ウェビナーで話す木下斉氏

地域経済の成長のポイントとは

まず地域経済の成長について考えてみましょう。

現在における日本の工業は、原材料は外国であったり、組み立てのみ日本で行われるなど、垂直統合型ではなく水平分業型のビジネスモデルを採用しないと厳しい状況にあります。もちろん分業型のメリットはありますが、統合型に比べて地域外へ資本が流出してしまうデメリットもあります。

地域の資本を増やす方法には、その地域にしかないものを活用すること、資本流出を防ぎつつ地域内でお金を循環することもあげられます。

例えば、全国規模の大型チェーンストアの場合、このストアの仕入れはその地域である必要はなく、また、そのストアでの売上は地域外へ流出してしまいますが、このストアが地域資本であり、地域で作られたものを販売している場合は、地域内でお金を循環することができます。

このように、地域資本の企業が地域に増えれば、地域の活性化につなげることができます。このためには、地域で生まれた企業や、地域で創業する人たちを守ること、いかにして地域資本の流出を防ぐかなど、地域経済のデザインをしっかり考えることが必要です。

日本各地の地域経済を見てきた木下氏は、地域活性化の起爆剤として誘致された大手ストアや、行政による大型プロジェクトの建造物など、その地域に適さない取組みにより、逆に地域活性化を阻害してしまうケースもあったと言います。

  • 地域で小規模でも起業に挑戦できること
  • 起業をサポートしてくれる仕組み
  • 地域の人たちが支持してくれる環境づくり
  • 地域の使われていない土地や空き家など地域の資産を利用すること
  • その地域にしかない資産を活用する など

そしてこれらを活用し、どのように地域内でお金を循環させるか、その仕組みを考えることこそが、地域を成長する上で重要なポイントです。

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